マンション管理の新しい手法 その5
※前回は、当然のように発生する質問の回答をご紹介しました。
今回は、実施後の様子をご紹介致します。
文章だけでは、実感しづらいとは思いますが、少しでも、発想の転換に役立ちましたら、さいわいです。
第4回「新管理手法の効果」
すぐに、これらを数カ月に渡って実行しました。そして、臨時総会を開きました。議案には、一部の区分所有者から、繰り返し質問が届き、その対応に理事会が困っていることを受け、それに関連する情報が詳細に記載されていました。
そして、今後、これまでのような対応は不可能であるから、理事会に可能な範囲で対応することと、現在の理事会の信任について、決議する、となっていました。もちろん、不信任となれば、理事は全員辞任することになります。
Bさんは、困っている現状を説明しました。約束どおり、Aさんを特定できないように配慮し、誰も攻撃しない内容になっていました。
説明が終わると、多くの意見が出てきました。その大半は、Bさんたち(現理事会)をフォローする声でした。
その様子に驚いたのは、Aさんでした。これまで、納得できるような回答さえできなかった理事会を多くの区分所有者が支持するとは思っていなかったのです。
そして、このような雰囲気の中で、自分だけが理事会を攻撃したら、単なるクレーマーになってしまうことを悟りました。Aさんは、黙っているより方法がありませんでした。
結局、臨時総会は、ほぼ全員の賛成により理事会の提案を支持することと、理事全員の信任が決議されました。
最大の課題をクリアし、理事会のメンバーは、ホッとしていました。その数ヶ月後、通常総会を迎えました。
当日、入居したばかりの新しい区分所有者から、決してベストとは言えない結果に対し、批判的な意見が出されました。
すると、別の区分所有者の手が上がりました。そして、その区分所有者が、これまでの経緯や考え方について、説明をしてくれました。その説明が終わると、大きな拍手が起こりました。
新しい区分所有者は、不思議に思ったが、周囲の笑顔や協力的な様子から、この管理組合が自らの力で前進していることを感じ取りました。
こうして、管理組合は、本当のスタートを切ったのです。(終)
※物語は、ここで終了です。
しかし、最後に書きましたとおり、ここが、「本当のスタート」なのです。
管理組合というのは、一部の詳しい人にやってもらえば良いものではありません。
もちろん、管理会社におまかせで良いものでもありません。
「みんなのことを みんなで考え みんなで決めて みんなで実行する」
これが、基本原則です。
ところが、これを実行しようと考え、輪番制を導入すれば、全員が順番で担当するのだから、課題は解決する、というものではありません。
なぜなら、順番だから、という理由で引き受けただけの理事長では、管理組合の業務をこなしきれないからです。
区分所有法やマンション管理適正化法など、様々な知識と理解がなければ、正しく運営することさえ、困難です。それらを新たに学んだとしても、理解する頃には、理事長の任期は満了しているでしょう。
ということは、
「理解のないまま理事長に就任しても、正しく運営できる仕組みが必要である」
ということになります。
私が「新管理手法」を考えたのは、このようなことを考えたからです。
「新管理手法」が、皆さんの管理組合のお役に立ち、参考になりましたら、私にとって、最大の喜びです。
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理事の皆さんに大きな負担がかかっている
無関心層が多過ぎる
理事の引き受け手がいない
専門委員会の活用方法がわからない
理事会や総会の出席率が低い
理事会の時間が長くなり過ぎる
管理会社と対等に交渉できるようにしたい
管理規約の改正をしたいが、検討する時間や人材が不足している
大規模修繕工事の準備の進め方がわからない
など、これまで300組以上の皆様のご相談に対応した経験を活かして、様々なお悩みにお答えしております。
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※この記事は発行者の判断により構成されています。そして、あくまでも参考意見であります。法的根拠を保証するものではありません。また、実際の事例では状況により、判断が異なることが予想されます。従って、紹介事例をあてはめることは困難なケースも多いはずです。よくご検討の上、ご判断頂きますよう、お願いいたします。もし、何らかの損害を被られても一切の責任は負えません。
マンション管理の新しい手法 その4
※さて、皆さんは、前回の提案内容をご覧になって、「なるほど、確かに、そのとおりだな。」と、素直に理解し、実行しようと思えたでしょうか?
おそらく、多くの方は、
「なぜ、攻撃をしてきた相手を守るようなことをしなければならないのか?」
「組合の恥を公表する必要は、本当にあるのか?」
などと、疑問を感じたのではないでしょうか?
実際、私が、このような提案をした時、理事長さんから、上記の質問をされることがありました。今回のポイントは、まさに、そこにあります。
第3回「相手を守り、都合の悪いことを公表する」
これらの提案に対し、Bさんから質問がありました。
なぜ、Aさんを守るようなことをしなければならないのか?
過去の経緯を詳しく正直に書くことは、組合の恥をさらすことになるのではないか?
私は、以下のように答えました。
誰かを攻撃することは反撃の原因を作ってしまうし、全区分所有者からは、個別の争いに見えてしまう。だから、どこからみても、Aさんを守っていると感じられるように進める必要がある。
それから、過去の恥や都合の悪いことを正直に書くことは、隠蔽体質がないことをアピールし、理事会の信頼を高める。そして、その信頼が総会決議へつながる。
Bさんたちは、かなりの不安を感じてはいたものの、他に有効な対策がないこともあり、上記の方法を誠実に実施してくれました。
ある程度、まとまった段階で、管理の基本原則に関する勉強会が開かれました。
そして、賛同してくれた数名の区分所有者が中心となって、マナー、コミュニティ、住民相談対応などの委員会が設置されたのです。
これらにより、「全員で協力する」「情報を開示する」「透明性を確保する」「間違いを責めない」「どちらが正しいかではなく、どちらも正しいと考える」「結果ではなく、プロセスを重視し、評価する」「言葉のひとつまで確認する」等、重要な内容を多くの人が理解していきます。そして、多くの区分所有者は理事会がAさんを責めない本当の理由を知り、納得するようになります。
また、議論や交渉の基本は、仕事、親子の対話、地域のコミュニティ、学校のPTA等、多くの場面で共通し、そのスキルが役立つため、マンション管理の勉強をすることが生活全般に役立つことを区分所有者たちが理解するようになります。
さらに、同じマンションの住人同士が仲良くなり、コミュニティを形成していくことにより、日々の生活が楽しくなっていきます。
同時に、人のつながりによるセキュリティーも高まります。なぜなら、区分所有者同士が仲良くなり、笑顔であいさつを交わすようになったからです。悪いことをする人たちは、仲良しや笑顔を嫌います。そういう場所では、連携プレーにより、悪さがすぐに知られてしまうからです。同時に、それは、対立がエネルギーを分散し、浪費するのに比べ、協力がエネルギーを集中し、相乗効果を生み出すことを多くの区分所有者が理解するようになります。
※ご理解頂けたでしょうか?
文章だけでは、実感しづらいかもしれませんが、実際に、やってみると、その効果に驚きます。私からすると、不思議なくらい、このような方法を採用している管理組合はなさそうです。しかし、だからこそ、その効果が大きいのかもしれません。
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管理費が高いが、詳細の検討方法がわからない
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管理費の滞納がある
騒音問題がある
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マナー違反に関する問題がある
ゴミの分別をしない住民がいる
駐車場の使用細則を守らない住民がいる
バルコニーでタバコを吸う住民がいる
修繕積立金が不足している
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マンション管理の新しい手法 その3
※前回は、問題の説明で終了しました。今回は、提案からスタートです。
第2回「基本に徹する」
マンション管理士である私の提案は、
「管理の基本原則遵守と新管理手法の採用」
でした。
具体的な一歩目は、広報誌発行と意見交換会開催です。
そのための準備として、情報開示用の資料を作成します。
その内容は、Aさんの理事長時代を含め、過去の経緯を克明に記すものです。
また、現在の状況と理事の追い詰められた様子も正直に記します。
この時の注意事項は、情報開示と透明性の確保をしなかったAさんを攻撃せず、プライバシーや個人情報への配慮に努めること、です。
それらを広報誌として発行し、意見交換会を開くのです。
広報誌や意見交換会などを通じて、現在の理事会の運営が、それなりに適正であることをアピールし続けることで、いずれは、大半の区分所有者の皆さんの支持を得られるはずです。
なぜなら、法令や規約などの詳細を知らなくとも、理事会が、全体と将来を考え、それなりの議論を尽くして、結論を出し、その結論を実行していることを大半の区分所有者の皆さんが感じ取るからです。
そこまでくれば、大半の区分所有者の皆さんの支持を基盤として、一部の苦情主(Aさん)に対抗することは、それほど難しくはなくなっているはずです。
管理組合の最終的な目的は、「安定した管理を継続すること」です。
それを達成するため、
広報誌などを活用し、
事実の確認と整理の重要性
管理の基本原則(「みんなのことを みんなで考え みんなで決めて みんなで実行する」)
管理の仕組みを説明する小冊子
「間違えた人を責めない」を理解するための事例紹介文
新管理手法の詳細
等、一般的に通用する手法や知識をまとめた情報の提供を続けることになります。
※いかがでしょうか?
通常、多くの区分所有者や理事の皆さんは、仕事での経験を基にして、管理組合の活動を考えようとします。ところが、管理組合は、企業とは異なる面がありますので、必ずしも正しく判断できるとはかぎりません。そして、どこかで、何かしらのズレが生じて、いずれは、大きな対立などへ発展する危険性をはらんでしまうのです。
それから、Aさんのような苦情主と文書でのやり取りを含め、「どちらが正しいか?」を議論することは、得策ではありません。
現在のように、様々な価値観が存在する場合、多様な「正しいこと」が存在しますから、簡単に、相手を論破することはできないのです。
だからこそ、
「情報開示と透明性の確保」
「みんなのことを みんなで考えて みんなで決めて みんなで実行する」
という管理の基本原則が重要になります。
これを実行していれば、「理事会VS区分所有者」という図式を
「大半の区分所有者VS一部の苦情主」という図式へ変換できるのです。
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マンション管理の新しい手法 その2
「ある管理組合での物語」
第1回「ありがちなトラブル」
一本のメールから、相談は始まりました。
それは、あるマンションの管理組合の理事長(Bさん)からでした。深刻な内容だったため、電話で簡単に内容を聞き、後日、そのマンションの集会室で、理事会に参加しました。
Bさんは、詳しく説明してくれました。
築15年、130戸の管理組合で、長期政権の理事長(Aさん)に金銭的な疑惑、業者との癒着の疑惑が生じたのです。
Aさんは、今から10年前、輪番で理事になりました。そして、管理会社の業務がいい加減なことに驚き、管理の中身を調べました。すると、数年後の大規模修繕工事の資金が不足する可能性があることを知ります。
ところが、Aさん以外の理事会メンバーは、やる気がなく、協力を呼びかけても、反応がありませんでした。
そこで、ひとりで、管理全般を見直し、節約に努めました。さらに、事情を説明した上で修繕積立金の値上も実施しました。結果、大規模修繕工事を実施できました。借入れも一時金の徴収もなく、無事に工事は完了しました。
しかし、大規模修繕工事を依頼した工事業者は、Aさんの知り合いからの紹介であり、その関連性を疑われてしまったのです。また、それまでの改革もかなり強引に進めていたため、一部の区分所有者には反感も買っていたのです。
そして、Bさんら意欲的な数名が理事になり、Aさんと業者について調査をしましたが、決定的な証拠はつかめなかったものの、多くの区分所有者は、Aさんと業者の癒着は、事実だった、という認識を持ったままでした。
そして、「怪しまれるようなことをする人が悪いのだ。」という雰囲気が残りました。
その後、Bさんたちは、運営全般を見直し、熱心、かつ、慎重に運営を進めました。
それは、Aさんのような間違いをしないため、そして、周囲からの疑惑や苦情を避けるためでした。
彼らは、話し合いを繰り返し、理事会で納得してから実行しました。
しかし、素人による管理組合の運営において正解を出し続けることはできない上、価値観の多様化しているため、常識や好みには大きな違いが存在します。そのため、様々な業務に対し、Aさんからのクレームが続いたのです。
クレームは文書で届き、期日を区切って返事を要求するものでした。
担当ごとに理事会メンバーが懸命に対応しました。期日までに妥当な結論を見つけ出し、Aさんに回答しました。しかし、Aさんは、豊富な経験や知識を持っていますから、理事会メンバーの回答に、多様な角度から疑問を投げかけてきます。
多くの質問に答えていくと、どうしてもほころびが出てきます。Aさんは、ここぞとばかりに、ほころびを徹底的に追及してきます。
このようなパターンを繰り返すため、理事会メンバーの対応は、時間的、精神的プレッシャーを伴うものになりました。
ついに、困り果てた理事会メンバーは、全員で辞任することを考え始めるところまで、精神的に追い詰められました。
以上が、相談の大筋です。
※今日は、ここまでです。
いかがでしょうか?
過去、管理組合の活動が低調だった時期から、たった1人で、がんばってきた理事長(A氏)さんですが、思わぬところで、悪者にされてしまいました。
これは、よくあるパターンです。長期政権に対する疑問というのは、調べる頃には、時間が経過しすぎていて、事実の確認と整理が難しくなってしまいます。そのため、モヤモヤが残ってしまうのです。
次回は、相談を受けたマンション管理士の提案から始まります。どうぞ、お楽しみに。
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マンション管理の新しい手法 その1
みなさん、こんにちは。
今回から、架空の管理組合をサンプルとして、多くの管理組合にありがちな課題とその本質を考えたいと思います。
そして、私の提唱している「新管理手法」をご紹介しようと思っています。
「新管理手法」は、
誰にでも理事長を務めることができるようにする。
理事長の大変さやプレッシャー、責任の重さなどを軽減する。
誰もが、いつでも、参加できるようにする。
などを目的にしています。
このようなことを目的にしたのは、管理組合においては、
「無関心層の増加」
が大きな敵であると考えているからです。
つまり、無関心層が増加すると、管理組合活動が低調になり、その結果、最終的には、外部の悪い業者にだまされてしまうからです。
同時に、
「一部の区分所有者による長期政権」
にも、大きな問題を引き起こす危険性があります。
つまり、人間は、誰でも甘い誘惑に弱いものですから、長期政権を築くと、業者との癒着の危険性が高まります。
また、癒着がなかったとしても、周囲から、そのような疑惑を持たれた時、長年に渡って貢献してきたにもかかわらず、悪者にされてしまうことがあります。
このような問題は、永遠のテーマでありながら、具体的な解決策が示されてきませんでした。私の提唱する「新管理手法」は、それなりの対応策を示そうと努力するものです。
私は、「新管理手法」をご紹介することで、皆さんからのご指摘やご批判などを頂きたいと思っています。そして、それらを組み込むことで、「新管理手法」をブラッシュアップし、一層、皆さんに役立つ仕組みへと進化させたいと考えています。
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マンション管理における話し合いのポイント 続編 その10
前回まで、「マンション管理における話し合いのポイント」をご紹介してきました。
総合的に考えていくと
「事実の確認と整理」
「みんなのことを みんなで考え みんなで決めて みんなで実行する」
に尽きるように思えます。
「事実の確認と整理」については、次の2つが参考になります。
1.ご紹介した上階からの騒音の例では、よくよく確認しないと、わからないこと(上階の上階が原因だった)を見つけることで、問題が解決しました。
2.機械式駐車場の例では、詳しく希望者2名の事情を確認することで、必要条件を満たすことができました。
「みんなのことを みんなで考え みんなで決めて みんなで実行する」については、次の2つが参考になります。
1.すべてのアイデアを検討する
2.情報と熱意のギャップ
つまり、多くの参加により、多くの意見を集約することが重要なのです。そのことが「漏れ」のない検討になり、同時に、多くの人に納得性の高い結論につながるのです。
マンション管理士に成りたての頃、管理活動について、
「面倒であっても、誰かがやらなければならないもの」
だと考えていました。
しかし、今では、
「面倒であっても、だれもがやらなければならないもの」
である、と考えています。
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マンション管理における話し合いのポイント 続編 その9
8.企業と非営利組織の違い
ビジネスでは少しくらい強引にリーダーが組織を運営しても、成果が上がれば文句を言う人はいません。ところが、非営利組織における合意形成では、発言の時間や回数、会議の進め方やルール、開催する場所や時間など、あらゆる面において公平に運営しなければいけません。意思決定への参画の機会と関与が公平になるようにすることが重要なのです。
実際、管理組合において、最終的な結論が同じでも、途中、質問状を提出したのに、返事がないまま、決定された場合と、質問状に対して、「事情を理解し、検討したが、全体の利益を損なう上、質問状の希望を叶えるための具体的な改善策がないため、今回は、当初の方針で進めようと思っています。あしからず、ご了承下さい。」などと、回答した場合とでは、総会議案になったときの反応が違ってきます。
時間や事情が許す限り、少数意見にもていねいに対応することが重要です。
この点については、理事長だけに負担させず、できるだけ理事会全員でサポートするようにしましょう。(チームで仕事をする、ということです。)
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